デジタルの疑問難問解決隊 第23回
今回はみなさまが不安に思っていらっしゃる、マイナンバーカードについて詳しくご紹介いたします。なお、もう既に所有されている方も思わぬ盲点がありますので、是非お目を通して頂きたいものです。
結論から申し上げますと、絶対持った方が良いカードです。テレビなどでも評論家が個人情報の流出や、資産を政府に知られたくないからという理由で所有することを拒否するとか、返納したいという論陣を張っている方がおられます。しかしそれは大きな間違いです。では早速このカードのメリットとデメリットを解説していきます。
現在のところあまり恩恵が無いように思われていますが、筆者は所有してもう既に8年になります。将来的には保険証、運転免許証、在留証明書などが統合され、様々なカードを持つ必要がなくなります。この他に処方された薬を調剤薬局で受け取る際に、一度カードを登録すれば、毎月保険証の提示が不要になります。国や自治体からの給付金の受取り口座を登録すれば、自動で自分の口座にお金が入金されます。そして最大の目的である電子証明書付き身分証明書であるという点です。
今までは市区町村の窓口や機械に、本人確認書類や印鑑カードを持参しなくてはならなかった各種証明書の発行が、身近なコンビニのコピー機で可能になりました。申請書の記入も、窓口や会計での待ち時間もなく、わずか数分で取得が可能です。
2月の寒い時期に税務署の窓口に並ぶ必要もなく、また病院、薬局の領収書、各種生命保険の控除証明書、住宅ローンの残高証明書などの提出も不要になり、全て自宅で完結します。また個人事業主で青色申告をなさっている方は、この制度を利用することで最大65万円の特別控除が受けられます。
さて利便性についてはご理解頂けたかと思いますが、既に持っているけど使っていないという方にはとくに注意をして頂きたいポイントを2つ解説していきます。
マイナンバーカードには有効期限があります。成人であれば発行から10年の誕生日までとなっています。そしてカードにも有効期限が記載されています。しかしそれとは別に発行の際に設定した暗証番号は5年で更新しなくてはなりません。この更新には本人が市区町村まで足を運び、自ら機械を操作して更新をしなくてはなりません。これを怠るとカードとしての機能が一部失われてしまいます。
マイナンバーカードには4つの暗証番号が格納されています。
「署名用電子証明暗証番号」※6桁以上16桁以内アルファベット大文字と数字の混在が必須。
「住民基本台帳用暗証番号」「券面事項入力補助用暗証番号」「利用者証明用電子証明書暗証番号」
※以上の3つは数字4桁で共通でも可能。
ここで問題なのは4桁の数字は必ず設定しなくてはなりませんが、署名用の6桁以上の暗証番号は任意ですと窓口で案内しています。しかしこれが問題で、人は任意と聞くと、辞めてしまう傾向にあります。しかしこの番号を設定しないと、e-taxやPayPayの本人確認などが利用できなくなります。みなさまもお手許のカードと一緒に4種類の暗証番号がメモされているかをご確認ください。もし一つでも空欄がある場合や、全て紛失している場合は、市区町村にて再設定をして下さい。今は必要ないと思っていても、すでに病院や薬局でスタートしているマイナンバーカードの認証にはこの4桁の番号が必要となります。
毎年、確定申告の時期になると税務署からのお知らせに、簡単で早いe-Taxの利用を促すチラシが封入されてきます。これを見るとあたかも簡単にできるように記載されています。しかし以下の注意点があります。スマホでの場合は所有のスマホにICカードを読み取るためのFelicaチップが入っているかが重要です。最近のiPhoneや国産スマホをお使いの方は搭載されていますが、外国製の場合は非搭載であることがほとんどのため、申請をすることができません。また個人事業主で青色申告の方はそもそもスマホで書類を作るのには無理がありますので、パソコンでの作業をお勧めします。そしてそのパソコンですがICカードリーダーというものが必要です。この全てが揃わないとe-Taxは利用できませんので、税務署が唱える簡単? と言えるのか疑問が残ります。
もう既に小さな医院でも設置が行われつつある、マイナンバーカードリーダーですが、こちらは機械の中にカードを挿入し、4桁の暗証番号、もしくは顔認証のどちらかで読み取りが開始されます。今年の4月より紙の保険証よりマイナンバーカードを提出した方は、診療代が若干安価になるように変更されました。また来年秋には保険証を廃止することが決まりました。(猶予期間1年)もういよいよ拒否をしている場合ではなくなりました。そこでみなさん、ちゃんと暗証番号を覚えていますか? カードは持っているから安心と思っていても、いざ来年の秋に初めて病院で機械にカードを入れて、暗証番号を入れようと思った時に番号を忘れた、違った、紛失していたということになって、慌てる前に今から確認しておくことを強くお勧めします。
マイナンバーカードを取得したら、必ずマイナポータルに紐付けをしましょう。これをおこないませんと住民票や印鑑証明書を取得するだけのカードに成り下がってしまいます。ところがここにも問題があります。それはスマホの場合はFelicaチップが入っているのか。そしてPCの場合はICカードリーダーを所有しているかということが問題になります。またiPhoneの場合はICチップの認識に大変手間取るという欠点があります。機種ごとに読み取り箇所が違い、また微妙な位置のズレでもエラーになりますので、お勧めはPC+ICカードリーダーです。以上の問題がクリアーになりましたら、カードを認識させます。ここで4桁の番号が必要です。公金受取口座の登録や健康保険証の利用申し込みを行うことにより、いままで述べてきたサービスを享受できます。またこの他に日本年金機構や、各種生命保険会社との連携をはかることにより、確定申告の際に添付が必要であった医療費や生命保険の控除証明書の添付が不要になります。またこれまでは通院や処方箋による医薬品購入の領収書添付が大変面倒でしたが、その集計や保存の手間が省けるようになりました。※処方箋以外の薬と通院による交通費の集計はいままでどおり必要になりますのでご注意ください。
少し前までは転居届ハガキを送るだけで、1年間の郵便物転送サービスが行えましたが、現在は本人確認が必須となりました。またその際にマイナンバーカードを使っての電子認証を推奨するようになりました。徐々にではありますが、行政、民間共にマイナンバーカードによる本人認証へとシフトしてきました。
法律では銀行に対して銀行口座への番号の紐付けを義務化しているのに対して、個人にはまだ義務化はされていません。しかし新規口座開設の際に番号の提出を求める金融機関もあります。普通口座ではまだ任意の段階ではあるものの、投資信託、外国送金、財形預金などの取引や氏名、住所変更には既に平成28年1月より義務化されています。また既に口座を開設している人に対しても、マイナンバーの提出のお願いが書面やメールで送られてきているのが現状です。
本年2月6日より全国の市区町村で、マイナポータルを通じて、転出入届がオンラインでできるようになりました。これによりいままでは、転出と転入と2カ所の役所に来庁しなくてはなりませんでしたが、これからは転入先だけに来庁するだけでよくなりました。引っ越しの準備で忙しい中、これは便利な制度と言えます。
今年の5月11日より、マイナンバーカードの電子証明書をAndroidスマートフォンで利用できるようになりました。しかしこれは一部の「おサイフケータイ」(FeliCaチップ)に対応した機種に限られています。残念ながらiPhoneは、いまのところ未定となっています。また注意点として、スマホ本体を売却する際に、OSの機能から初期化をしても、FeliCaチップを初期化しないと、マイナンバーの情報が残ったままとなりますので、注意が必要です。これはスイカやパスモなどの電子マネーも同様であることをお忘れにならないで下さい。
先日、河野デジタル大臣が謝罪した、本人名義の口座登録に家族名義の口座が登録されていたり、他人の医療情報が自分の情報に入っていたという問題は制度の問題ではなく、全てヒューマンエラーによるものです。説明をよく読まないで、入力した本人の読解能力の問題であります。ただし、一部の地域で発生したコンビニで住民票を取得した際に他人の住民票が出力された問題は、システムを構築した富士通のプログラムエラーによるものであります。ではどうして他人の情報が自分のカードに入るのかと言えば、これはカードを受け取る際に、役所でタッチパネルを使って暗証番号を設定します。この入力が完了したら必ずログアウトしなくてはなりません。しかしこの時に役所の職員は画面入力を見ないように、ソッポを向きます。窓口が多忙の時に、次々とやってくる住民対応にうっかりログアウトを忘れて、次の人の作業に入ったために、前の人に次の人の情報が上書きされるのであって、これは人間によるミスであります。よって総務省の味方をするわけではありませんが、制度の問題ではありません。しかしシステム上、入力が完了したら自動でログアウトするシステムを構築していれば防げた問題とも言えます。
ここからの内容は6月6日に実施された「第4回デジタル社会推進会議」にて決定した方針を基に、今後のロードマップを分かりやすくご説明いたします。
健康保険証は2024年秋に廃止する。運転免許証とマイナンバーカードの一体化については、2024年度末までの少しでも早い時期に一本化する。また対面確認の場面においても公的認証による本人確認を進めるなどとし、本人確認書類のコピーは取らないと決定いたしました。
ここでこの公的認証が問題になります。何が問題かと言いますと公的認証=カードの暗証番号による本人確認ということになります。よってカードを提出し、リーダーに暗証番号を入力して一致した場合は認証となります。しかし番号を間違える、もしくは知らない、忘れたとなると本人が持参し、顔写真までついているのに本人ではないという決断が下され、却下となることが予想されます。
長い人生において、必要でしたのはキャッシュカードの4桁の暗証番号ぐらいでした。しかし最近はなんでもIDとパスワードが必要な時代となりました。これからは必ずパスワードはデジタル化をして保管することをお勧めします。ノートの隅にチョロっと書いておくようなことは絶対に止めて下さい。
これからもあらゆる局面でIDとパスワードを設定する機会が増えると思います。そこで今回は任意で決められる場合に避けたい文字列をご紹介しますので、是非覚えて下さい。
数字では019はなるべく避けたいです。理由は、0は小文字のo、1は小文字のl(エル)、そして9は小文字qと判別が難しいからです。ただし数字が連続している場合は前後で判断がつきますのでその限りではありません。
次にアルファベットではKは大文字と小文字の区別が難解です。Lの小文字も数字の1と間違えます。次にQの小文字です。数字の9と間違えます。そしてミスが最大に多いのがOです。ゼロなのか? Oの大文字なのか小文字なのか?
最後にテクニックをひとつ。パスワードを求められたら、あらかじめID、パスワード一覧をテキスト形式で作っておけば、そこからコピペすればミスはなくなります。ただし、金融機関ではコピペ禁止の場合もあります。いずれにしましても一覧は手書きではなく、テキスト化しておくことを強くお勧めします。
もしマイナンバーカードがこれからさらに普及し、あらゆる情報が集積された時に、ハッカーによって全ての情報が抜き取られたとします。その情報は反社会的勢力に流出し、預金残高の多い人は狙われたり、医療情報からは高額の薬のセールスなど、ありとあらゆる詐欺や強盗の対象者リストに自分の名前が載ってしまいます。しかしこうしたことは、マイナンバーとは関係なく毎日のように横行しています。大切なことは恐れることではなく、しっかりとしたパスワード管理とセキュリティー対策です。また軽い認知症が始まった時に周りの家族が気づいてあげること。そして頭がしっかりしているうちに、IDとパスワードを書き出して、ご家族で共有しておくことが大切です。最近ではポイントカードとしても使えるようになどという話も出ていますが、あまり頻繁に使う局面が多くなると、紛失の原因になりますので、保険証と免許証ぐらいにとどめておいてほしいものです。みなさまもまだお持ちでない方はこの機会にご一考されてはいかがでしょうか? (広報委員会)